声帯を合わせるとはどういう事なのか?
みなさん、こんにちは。
車田和寿です。
今日は、「声帯を合わせる」というテーマで話をしたいと思います。
この間、ポジションの話をして、声のポジションとは、
「物理的に声帯を振動させる場所」
だと言いました。
今日は、じゃあ声帯というものを、どのように振動させるのか、という話をしていこうと思います。
最初に言っておきますが、日本人はこれがめちゃくちゃ苦手です。
ほとんどの人は、間違った力で声帯を振動させてしまいます。
だから、その結果として効率的に声帯を振動させる事ができません。
その結果、
- 頭声
- マスク
- 顔の響き
のような場所に、響きのポイントを求めるようになってしまう傾向があります。
でも、声帯というのは、正しい方法で合わせる事ができれば、全然怖くもなんともないし、声にダメージを与えるものでもありません。
今からその話をしていきましょう。
声帯の振動とは何か
さて、声帯の正しい振動というのは、理論的には非常にシンプルです。
ここに2枚の紙があります。
空気がこの間を通る事で、勝手に吸い寄せられるように振動する。
これが、もっとも効率的な振動の原理です。
この時、この2枚の紙には、もちろん形を保つための適度な固さはあります。
でも、プラスチックの下敷きのように、常にシャキッと形が変わらないわけではないですよね。
下側だけで支えたら、こうやって倒れてしまい、自立する事ができません。
つまり、
紙自体には、無駄な力は入っていない
という事です。
声帯にも「無駄な力」は必要ない
声帯も、効率的に振動させようと思ったら、声帯の筋肉自体には、無駄な力が一切入っていないようにしないといけません。
ポイントは、
「無駄な力はない」
という事です。
紙が振動する時に必要なのは、上と下をしっかり押さえておく事です。
この二つのポイントがないと、いくら頑張って息を通しても、紙は振動しません。
声帯を振動させる時も、この二つのポイントが重要になります。
実際には、この2点の中でも、
前のポイントを意識する事が重要です。
前のポイントというのは、いわゆる喉ぼとけの所ですね。
声帯は「引っ張られる」事で高音になる
このポイントは前後に動きます。
前に倒れ込むようにして動くんです。
すると、声帯がつながっているポイントが離れますので、声帯も引っ張られます。
そうすると振動数が上がって、高い声が出ます。
つまり、高い声というのは、
「押し込む」事で出すのではなく、「引っ張られる」事で出る
わけです。
声を出す時も、この二つのポイントが自然に合わさる事が大事で、後はそこを息が通過する事で振動する。
でも、声帯自体に余分な力が入っていると、これがうまくいかないんです。
ゼロ発信とは何か
さて、それでは具体的に、どんな声帯の動きをマスターする必要があるのかを見ていきましょう。
一つは、このチャンネルでも何度か触れている、
「ゼロ発信」
の振動です。
息を流すのと同時に、自然に声帯の振動が起こり、
まるでスピーカーのボリュームをゼロから少しずつ上げていくかのように、徐々に声にしていく振動のさせ方です。
ゼロ発信の特徴
音の出だしが、非常に柔らかいのが特徴です。
まるで、オーケストラの弦楽器が演奏するような音の立ち上がりになります。
決して、
「アッ!」
というアタックがあるわけではありません。
だから僕は「ゼロ発信」と呼んでいます。
ゼロから、
1、2、3と段階的に音が立ち上がっていく。
そんなイメージです。
これは、声帯に押す力が加わる人には、決してできません。
だから、押す癖が強い人には、この練習を課題として出す事がよくあります。
ちなみに、このゼロ発信は、声のリハビリ現場でも練習として行われる事があります。
とにかく、
「無駄な力ではなく、自然な力で鳴らす」
その感覚を身につける事がポイントです。
グロティスシュラークとは何か
次は、
グロティスシュラーク
と呼ばれる声帯の閉じ方です。
例えばドイツ語には、母音で始まる単語を、柔らかく「あ〜」と始めるのではなく、
発音する瞬間に声帯を打ち鳴らしてから発音する、という規則があります。
これをグロティスシュラークと言います。
Glottisというのは、日本語では「声門」の事です。
左右の声帯の間にできる開閉部の事ですね。
声というのは、息が通ると声門が開き、そして元の場所へ戻ろうとして閉じます。
これが何度も繰り返される事で、振動になります。
そしてSchlagというのは、「打撃」という意味です。
つまり、
声門を打ち鳴らすようにして音を出す
という事です。
本当にパワフルな声に必要な技術
実は、このグロティスシュラークは、
本当にパワフルな声を出す上では、非常に重要な技術です。
マリオ・デル・モナコやコレッリ、そしてモンセラート・カバリエのような大歌手は、このグロティスシュラークを非常に効果的に使って歌っています。
ドイツ語を正確に歌おうと思ったら、当然これも必要になります。
ただし、
- ドイツ語発音で使うグロティス
- パワフルな声を出すためのグロティス
この二つは、原理は同じでも意味合いが少し異なります。
後者は、よりトレーニング的、テクニック的な意味合いが強いです。
つまり、
鍛えられたグロティス
という事です。
日本人がグロティスを苦手とする理由
ただ、このグロティスシュラークは、日本人にはもっとも難しい技術の一つだと僕は思っています。
なぜなら、日本人は、
「声帯を打ち鳴らす」
と考えた瞬間に、余分な力で叩き合わせようとしてしまう傾向が非常に強いからです。
本来のグロティスというのは、
声帯が引っ張られた状態で、効率的にぴたっと合わさり、その極小のポイントから自然に振動するものです。
でも、日本人がやると、
左右から力で叩き合わせる
ような方向へ行ってしまう事が多い。
出た音は似ているので判断が非常に難しいですが、
- 効率的に合わさったグロティス
- 力で叩き合わせたグロティス
では、使っている力が全く違います。
だから順番が大事
だから僕は、
ゼロ発信ができるようになってから、グロティスを教える
ようにしています。
力が入っている段階でグロティスをやると、さらに力を加えて、より固い声になってしまうからです。
それだけならまだいいですが、それがダメージにつながる可能性もあります。
そりゃあ、こんな感じで【手を叩き合わせるように】声帯を鳴らしていたら、ダメージが大きいのは分かりますよね。
人によっては、さらに喉を閉めようとしてしまう事もあります。
だから、焦らず順番にやるのが一番大事です。
グロティスは一人で判断しない方がいい
これは、その人がどんな問題を抱えているかによっても変わりますが、
グロティスシュラークは、
自分で正しく判断できるようになるまでは、先生と一緒にやった方がいい技術
だと思います。
出ている音だけでは、正しいか間違っているか、本当に分かりにくいからです。
まとめ
今日は、「声帯を合わせる」というテーマで話をしました。
声帯というのは、
- 無理やり押し付けるものではない
- 自然に合わさる事が大事
- 無駄な力を抜く事が大事
- 効率的に振動するポイントがある
という事です。
そして、
- ゼロ発信
- グロティスシュラーク
これらも、正しい順番で身につける必要があります。
力で押し込む方向へ行かないように気を付けて下さい。

