喉を下げようとしてはいけない理由
みなさん、こんにちは。
車田和寿です。
今日は、**「喉を下げようとしてはいけない」**という話をしたいと思います。
これまでこのサイトでも、何度も喉を下げることの大切さについて説明してきました。
それなのに、急に「喉を下げようとするな」と言われたら、矛盾しているように感じる人もいるかもしれません。
でも声楽というのは、一見矛盾しているように見えることを同時に成立させなければならない世界です。
言葉の意味を、自分の感覚だけで理解したつもりになると、本質から離れてしまうことがあります。
ですので今回は、「喉を下げる」という言葉の本当の意味について整理していきましょう。
喉は下がっていなければならない
まず前提として、喉は下がっていなければなりません。
だから多くの人は、「喉を下げなければいけない」と理解します。
もちろん、正しいやり方で喉を下げられるのであれば、それ自体は何も問題ありません。
ではなぜ、「喉を下げようとするな」と言うのでしょうか。
理由は非常にシンプルです。
ほとんどの人が、“力づく”で喉を下げようとしてしまうからです。
「下げる」という言葉を聞いた瞬間、多くの人は無意識に力を加えます。
例えば、
- 舌根を押し下げる
- 舌の付け根に力を入れる
- 喉ぼとけを無理やり低い位置に固定する
こうした動きをしてしまいます。
そしてこれは、ある意味当然です。
なぜなら、多くの人は今までそういう力の使い方しかしてこなかったからです。
本当に必要なのは「下げる力」ではない
しかし、喉を下げるために本当に必要なのは、押し下げる力ではありません。
必要なのは、これまで使ったことのない筋肉の働きです。
つまり、まずはその筋肉を動かせるようにならなければいけません。
この筋肉が自然に使えるようになれば、「喉を下げる」と考えても問題はありません。
ですが、まだそれができない段階で「下げよう」とすると、人はどうしても動かしやすい舌の力に頼ってしまいます。
だから、そういう人に対しては、**「喉を下げようとするな」**という指示の方が正しくなるわけです。
喉は「開く」「引っ張る」
では、どうすれば良いのでしょうか。
まだ正しい感覚が身についていない人は、まず**「下げよう」と思わないこと**が大事です。
下げようと思った瞬間、舌の奥や喉の周囲に無駄な力が入りやすくなるからです。
試しに、舌の力を抜いて頭を左右に振ってみてください。
舌そのものを動かすのではなく、舌の力を抜いた状態で頭を振るのです。
力が抜けていれば、舌は顔と逆方向へ自然に揺れます。
これがうまくできない人は、「下げよう」と思った時点で、まず舌に力が入っています。
そういう場合は、下げるのではなく、
- 開く
- 広げる
- 引っ張る
という感覚を持った方が良いです。
具体的には、首の周囲の筋肉を斜め下へ広げるような感覚です。
すると、その結果として喉が低い位置に保たれます。
重要なのは、**「結果として低い位置にある」**ということです。
水面に浮かぶ落ち葉
喉の状態というのは、決して押し下げてはいけません。
僕はよく、**「水面に浮かぶ落ち葉」**に例えています。
例えば、細いグラスに水が入っていて、その上に落ち葉が浮かんでいると想像してください。
この落ち葉が、喉の状態です。
もし「喉を下げよう」とすると、その落ち葉を指で水中へ押し込むことになります。
つまり、本来は自然に浮いていなければならないものを、別の力で無理やり押し下げているわけです。
こんな状態で、良い声が出るでしょうか。
当然、出ません。
ではどうするのか。
首周りを広げ、喉全体のスペースを大きくしていきます。
すると、同じ水でも、大きな器に移した時のように水位が下がります。
でも、落ち葉は浮いたままです。
これが、本当に喉が下がった状態です。
押し下げているのではありません。
周囲のスペースが広がった結果として、水面が下がっているだけなのです。
高音が怖くなくなる理由
この状態の大きな利点は、声帯が自由に動けるスペースが生まれることです。
つまり、声帯が自然に伸縮し、チルトできる余裕ができます。
高音というのは、狭いスペースで出そうとすると、必ず苦しくなります。
やがて恐怖感にもつながります。
しかし、スペースが十分に広がり、水面が下がった状態では、高音は決して怖いものではありません。
むしろ非常に自然で、心地よい感覚になります。
水面に浮かんでいる状態というのは、安定しているからです。
逆に、急に沈められたり、水面から浮き上がったりしたら怖いですよね。
それが、喉を押し下げたり、逆に上がってしまった時に起こっていることです。
まとめ
今回は、「喉を下げようとしてはいけない」というテーマで話をしました。
もちろん、最終的には喉は低い位置に保たれなければいけません。
しかし、それを力で押し下げようとしてはいけないのです。
大事なのは、
- 開く
- 広げる
- 引っ張る
という方向の感覚です。
声というのは、メンタルやイメージの影響を非常に強く受けます。
「下げる」と思っただけで、無意識に余計な力が入る人も多いです。
そういう場合は、別の言葉に置き換えて練習した方が、正しい感覚に近づきやすくなります。
ただし、こうした感覚は、一人では判断が難しい部分もあります。
できれば、きちんとレッスンの中で確認しながら進めるようにしてください。
このサイトでは、これからも声楽に関する情報を発信していきます。
ぜひ他の記事も参考にしながら、学びを深めてみてください。

